フリースペース・自主活動・グループワーク

はじめに

 ここでは、リヒトが行っている、フリースペース・自主活動・グループワークという3つの事業についてお話します。

フリースペース

 はじめに、フリースペースについてお話しします。フリースペースは、今日お話しするリヒトが行っている事業の中でも、特に大事にしたいと考え、力を入れている事業です。

・リヒトのフリースペースとは

 フリースペースは、リヒトに登録された方がいつ来ても良く、いつ帰っても良く、自由に過ごせる空間です。お茶を飲みながら人と話をしたり、パソコンをしたり、新聞を読んだり、昼食を食べたり、畳に横になって仮眠をとったり・・・と自由に過ごすことが出来ます。

 利用の理由や目的は様々です。例えば、生活リズムを整えるために来る方や、自宅ではなかなかゆっくり出来ないという方がいます。また、自主活動のために来る方や相談に来る方がいます。他に行く所がなくて仕方なく来る方もいれば、何となく寂しいから来る方もいます。フリースペースという同じ空間を共有していても、誰もがそれぞれの事情や思いをもって利用されます。

 また、リヒトのフリースペースは他の支援センターに比べて、広い・明るいと驚かれることが多いのですが、初めて来た方に安心感を与えられて、いつ来てもくつろげるような空間にするため、家具の配置や内装にはこだわりをもっています。

・フリースペースを大切にしている理由

 リヒトのフリースペースの特徴として、スタッフが常駐しているということが挙げられます。これは、フリースペースに来た方が安心して過ごせるよう、スタッフが意識的に行なっている事です。不安になった時に、いつでも相談できるよう近くにいることで、安心感を持って、自分に必要な時にリヒトを利用してもらうためです。また、面接室ではなくフリースペースという場所で話をする中で、その方の人柄や体調、食事や睡眠などの生活の様子を知ることも出来ます。お互いの関係性の中で、メンバー自身が知らない変化に気付いた時に、心配していることを本人に伝えて一緒に考えてゆくことが出来ます。緊急時に早い対応をすることも可能になります。

 このような働きがあるからこそ、リヒトはフリースペースを大事にしているのです。

・〝くつろぐ〟場であり〝鍛えられる〟場

 利用する方の多くが〝くつろぐ〟ために来所されるフリースペースですが、フリースペースと言えど、完全に何もかもがフリーという訳ではありません。喫茶店ではないのですから、過ごし方にしても気遣いや、自分自身の調節が求められます。何より人とかかわることで自分の長所や短所が明らかになってゆく場所でもあります。フリースペースはくつろぐ場でありながら、 〝人とのかかわり〟の中で自分自身の課題になる部分が鍛えられてゆく場所です。

自主活動

 続いて、2つ目の自主活動についてお話します。

・自主活動とは

 フリースペースでは、作業所のような「作業」や、〝何時まで居なくてはならない〟という拘束時間がありません。先程お話ししたように、来る時間や帰る時間だけでなく、過ごし方も個人に任されています。その中で、誰かが「トランプをしよう!」と声を掛けると、周りの人が集まってゲームが始まります。「天気が良いから外で体を動かそう」という声が上がると、それもいいなと思う人たちが連れ立って外に向かいます。「紅葉を見に行きたい」「調理がしたい」という希望があがった時には、事前に行き方を調べたり、買い物の必要も出てきます。そこで、現在は、月に一度開く『リヒトタイム』という話し合いの場で、「やりたいこと」を募集し、何をするかを決めています。調べることがあれば分担して行います。

・自主活動費について

 購入したい物が上がった時には、自主活動費の中からやりくりします。自主活動費というのは、フリースペースを利用する方が1杯50円で飲んでいるコーヒーや紅茶のお金のことです。皆のお金ですから、自主活動費の会計報告も、月に一度の『リヒトタイム』という話し合いの場で行ないます。今どれだけのお金があって、いつ、何を購入するのか、話し合いながら決めて行きます。

・これまでに行われた自主活動

 これまでに行われた自主活動には、「調理」「音楽鑑賞」「クリスマス会」「サイクリング」などがありました。もちろん、『リヒトタイム』という話し合いの場に参加すること自体が、自主活動です。自主活動は、何かをしようという共通の目的で集まった方たちが一緒に同じ経験をすることです。

・自主活動の目的

 しかし、メンバーの中には、自主活動の声掛けはスタッフが率先してやるものだと考える方もいます。スタッフから声を掛けた方が、人間関係に波風立てずにスムーズに事が運ぶと言う方もいます。しかし、自主活動の目的は、企画を実施すれば良いということではありません。自主活動を行う目的は、メンバーがメンバーに呼びかけるというところにあります。

 リヒトでは、個人が特定の〝役割〟を背負うことがあまりありません。なので、何か提案することで、自ら役割や責任を担うことになると敬遠する方がいます。でもそれをやろうとする人や、参加しようかなと考えている人をスタッフはお手伝いします。そして、自主的に参加しようという人や機会が生まれやすくなるように、試行錯誤しながら環境を提供しています。

・「プログラム」ではなく「自主活動」を

 あくまでメンバーの方が自主的に行なう活動が、リヒトの自主活動です。以前は「自主活動」のことを「プログラム」と呼んでいましたが、意識的に「自主活動」という呼び方に変更しました。「プログラム」と呼ぶと、何となくスタッフや積極的なメンバーが用意して提供するものというイメージを与えてしまうからです。また、大事なのは企画そのものではなくて「試行錯誤する過程」だということが伝わらないからです。

 自分だけ、友達とだけではなく、フリースペースに来所する様々な人と一緒に何かをやろう、楽しもう、不安を抱えながらもかかわろうと思うことが自主活動の原動力です。

グループワーク

 それでは最後に、グループワークについてお話します。

・『はじめてのリヒト』

 現在は、『はじめてのリヒト』というグループワークを行なっています。対象者は、リヒトを利用して間もない方や、フリースペースには緊張して行きづらいという方です。リヒトのような社会資源につながることが本人、またはスタッフが考えて必要だと思う方も対象になります。

 グループワークは、2週間おきの火曜日に行っています。10時から12時という時間帯です。そのあいだはフリースペースを閉所して行っています。主に、みんなで話し合いながら予定を立て、外出や調理、軽い運動をして過ごします。

 グループワークでは、安心して参加してもらうために、ある程度の枠組みをあらかじめ設けています。そのため、日程と参加者を固定し、スタッフが司会進行を行なうなど、保護的な環境を用意しています。

 グループワークに参加する理由や目的は様々です。また、年齢や性別の制限もなく、住まいも様々です。それでも参加の回を重ねるごとに、グループの一員として所属感を抱きます。現在のグループでも、自分の生活を話したり、欠席している人のことを気にする声も多く聞こえるようになりました。

 まずは決まった時間に通い、限られた人数の中で人に慣れ、そこで話をしたり出かけたりと純粋に楽しめる場になれば良いと考え、行なっています。

・『就労グループ』

 また、以前は就労をテーマに『就労グループ』というグループワークも行なっていました。これは、就職を斡旋するためのグループではなく、就労に関心のある方たちが集まり、それぞれが抱える不安や焦り、情報等を話し合い、共有し合う場です。そのため、必ずしも就職をゴールとしているわけではありません。就労するとはどういうことか?自分は何で働くのか?そういうことを話し合う中で、「就労」や「働く」ということを考える機会の一つになるよう、グループワークを展開しました。

・グループワークへの期待

 グループワークはフリースペースや自主活動とは異なり、共通のテーマが設定されていますし、日程と参加者が固定されています。参加する中で自分自身のことを話すうちに、他の参加者との親睦が深まり、グループに対しても徐々に所属感が生まれると考えます。自分ひとりではなく、皆で考える・皆で行動するという体験は貴重です。グループワークを通して、皆で集まって、活動したり話をしたりする経験を積み重ね、不安や希望を〝仲間〟と共有できる時間になればいいと思います。

報告者:藤間智子(リヒトスタッフ:精神保健福祉士)

2007事業報告会発表原稿集 2/5


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