訪問支援・同行支援・指定相談支援事業

はじめに

 ここでは、訪問支援と同行支援、指定相談支援事業についてお話します。

 この3つのかかわりは、先にお話ししたフリースペースや面接相談とは異なり、限定的に行われている支援です。他の多くの支援は、ご本人の希望があって支援がはじまります。しかし、ここで述べる3つの支援は、スタッフから提案することで支援がはじまることが多くあります。

 まず、訪問支援と同行支援について、その実施体制と機能、そして実際についてお話しします。その後、障害者自立支援法ではじまった『指定相談支援事業』、いわゆる障害者ケアマネジメントについてお話しします。

訪問支援・同行支援の利用状況

 リヒトにおける訪問支援と同行支援は、非常に限定的に行われています。そのため、訪問支援と同行支援の利用件数は、非常に少ない傾向にあります。現在、訪問支援や同行支援は、スタッフからの提案により、利用につながることがほとんどです。

 リヒトを利用している方たちで、「自分は訪問支援や同行支援が必要だ!」と思っている人は少なく、「自分とはあまり関係のないもの・・・」と考えている方がほとんどのようです。訪問支援や同行支援を「どのように利用して良いかわからない」と思われている方も大勢いるのではないでしょうか。

 現在は一定の条件にあり、「訪問支援や同行支援が必要だ」とスタッフが判断する人に対して、スタッフから積極的に声をかけお勧めしています。その際、訪問支援や同行支援の必要性や有効性を伝えた上で、ご本人に考えていただき、判断してもらいます。

 私たちは、みなさんがご自身でできることが多い方がよいと考えています。また、プライベートな空間である自宅に、むやみに訪問することは極力したくありません。

 そのため、残念なことではありますが、訪問支援や同行支援の詳しい内容や様子は、利用するご本人とスタッフだけが理解している状況です。

訪問支援・同行支援の有効性

 訪問支援や同行支援は、しょうがいをもちつつ地域で暮らす人たちの生活を支える上で、とても重要であり、意味のあるものです。また私たちにとって訪問支援や同行支援は、一人ひとりの生活を知ることができる機会です。訪問支援をすることで私たちは、その人の生活について多くのことを知り、多くのことに気付かされます。その人の生活する上での困難さや、生活力に気づいたり、生活の中で大事にしていることが伝わってくることがあります。そして、その人をより深く理解することに繋がります。これは、フリースペースでは決して出会うことのできないものです。

 そうした新しい理解や気づきが、その人に対する見方や考え方をより豊かにしてくれます。私たちは、訪問支援や同行支援を通じて、改めて、生活のことをご本人と一緒に考えたり、その人が希望する暮らしに必要な情報や支援を提供できるようになるのです。

 以上のように、地域生活支援を推し進めていくために、訪問支援や同行支援は非常に有効です。しかし、それらが充分に行えない組織上の理由があることもまた事実です。

 訪問支援や同行支援を行うことは、スタッフの誰かが外に出て行くことを意味しています。リヒトでは、スタッフがフリースペースに常駐することを大切にしています。そのため、スタッフの1名なり2名なりが外出することで、フリースペースに常駐するスタッフの数が減ってしまいます。また、外出するスタッフが多くなると、スタッフ体制の問題で、突発的な面接相談に対応できない可能性が高くなります。以上のような理由からも、訪問支援や同行支援は、限定的な実施になっています。

支援センターが担う役割と矛盾

 リヒトでは、登録者に対してフリースペースを提供するという普遍的な支援と、訪問支援や同行支援などの個別的な支援を行っています。それゆえ訪問支援や同行支援は、フリースペースなどの他の支援と調整しながら、優先順位をつけて実施せざるを得ません。しかし、私たちにとっては、フリースペースでの支援も、訪問支援や同行支援も、同じように大切な支援です。少ないスタッフ体制であっても、訪問支援や同行支援が必要な際に、それを削ることは出来ません。私たちは訪問に出かけます。実際、リヒトをはじめとする地域生活支援センターでは、「必要な時に、必要な分だけ、必要なマンパワーを配分する」という機能を、期待されてきたのです。

 このように、支援センターには大きな期待と役割と矛盾が担わされています。リヒトでは、フリースペースを優先するか、それとも、訪問支援・同行支援を優先するかという択一的な問いではなく、〝制限のある環境において、どちらの支援も大切にしたいという矛盾〟に悩みながら、これらの支援を行ってきました。

訪問支援・同行支援の実際

 それでは、実際に行われている訪問支援や同行支援をいくつかの例を出してお話します。個人情報に繋がるお話になるので、状況等を改変し、個人が特定されないようにお話します。

・訪問支援

○単身生活をされている方が体調を崩してしまった際の訪問

 自宅へ伺い、日常生活で困難なことの相談にのったり、必要なことをお手伝いしました。

○ご家族とお会いするための訪問

 自宅に伺ってご家族とご本人と一緒にお話をしました。

○利用者が入院された際の訪問

 入院先へ足を運び、ご本人と直接、お話をしたり、医療機関の方とお話をしました。

・同行支援

○医療機関への同行

 受診の際に、ご本人が、ご自身の体調や日常生活の不安などを医師にうまく話せないと感じられている時や、医師からの意見を一人で聞くことに不安がある時などに同行します。

○ハローワーク、その他、地域の関係機関への同行

 関係機関の利用や紹介のための同行です。ハローワークなどの地域の関係機関の利用や紹介にあたり、初回見学時の同行が多いです。スタッフが同行することで、初めて行く場所への緊張が減ったり、リヒトスタッフが他機関の支援者に対して、その方がどんな方であるのかについて、お伝えすることもできます。他機関の支援が、よりスムーズに受けられるよう心がけています。

・訪問支援・同行支援の組み合わせ

 当時、入院されていた方の退院支援で、ご本人の希望ではなく、関係機関からの依頼でした。もちろんご本人の了解の上で行われたものです。退院までに行う外出や外泊時に、病院から自宅への送迎をしました。また、外出や外泊時に自宅に訪問し、買い物や食事などの生活支援を地域の関係機関と協力して行いました。その後は、病院からの外出と外泊を繰り返し、退院しました。現在は、地域で単身生活を始めており、リヒトでは地域生活における相談の対応をしています。このように、訪問支援と同行支援の両方を組み合わせて行う場合もあります。

 これまで述べてきたように、訪問支援と同行支援は、様々な場面で一人ひとりの生活にあわせて行われています。そして、リヒトで行われている支援の中でも、個別的な支援の枠組みを持つものが、訪問支援と同行支援なのです。

 このお話を聞いて、これらの支援の利用を考えた方は、まずスタッフにご相談ください。併せて、関係機関のみなさまにも、私たちが協力できることがあれば、ぜひ、ご相談いただきたいと思います。

指定相談支援事業

 最後に指定相談支援事業について、少しだけお話します。最初にお話したように、指定相談支援事業は、障害者自立支援法ではじまった『指定相談支援』、いわゆる障害者ケアマネジメントにあたります。

 指定相談支援が行える条件は厳しいものがあります。まず、この支援を受けたいというご本人が、単身で生活していなければなりません。同時に作業所などの日中活動の場や、グループホーム(共同生活援助)を利用していない人が対象になります。これらの条件に加えて、ご本人がホームヘルプサービス(居宅介護)などのサービス利用を希望された時にはじめて、リヒトが指定相談支援を行える要件が整います。このような障害福祉サービスの利用をご本人が、ご自分で決めることが難しい場合、リヒトのような相談支援事業所にいる『相談支援専門員』が、ご本人に代わって、サービス利用のコーディネートを行うのです。

 この指定相談支援は、お住まいの市役所に書類を申請することで、検討が始まります。市役所へ行って、書類を書くこともリヒトが支援できます。そのため、市の職員とも相談しながら詳しい内容が決まり、行われます。

 なお、指定相談を利用すると、相談支援専門員による月1回の定期的な訪問が行われるようになります。この訪問は、たとえばホームヘルプサービスを利用している方ならば、相談支援専門員がホームヘルパーの仕事ぶりを確認したり、実際にご本人が困っていることがどんなことなのかなどを確認するための訪問です。

 指定相談支援の際、リヒトは利用する事業所や関係機関との連絡や調整などのコーディネートの役割を担いながら、サービス利用についての相談や生活上のことなど個別の相談に応じていきます。

 指定相談支援の利用についてはリヒトスタッフにご相談いただくか、お住まいの市役所の窓口でご相談ください。

まとめ

 以上、訪問支援・同行支援・指定相談支援事業についてお話しました。これらの支援は、どのような場合でも「利用することが良いこと」ではありません。支援がなくとも、ご自身ができることを継続しながら、地域生活が送れるならば、それは素敵なことです。無理に利用する必要はありません。ご自身の望む地域生活を実現するために、うまく活用していただきたいと思っています。以上の3つのかかわりは、限定されたものではありますが、利用を希望される方は、ぜひご相談いただきたいと思います。

報告者:金子忍(リヒトスタッフ・相談支援専門員)

2007事業報告会発表原稿集 4/5


1. リヒトが大切にしていること

2. フリースペース・自主活動・グループワーク

3. ピアカウンセリング

4. 訪問支援・同行支援・指定相談支援事業(このページ)

5. ネットワーク形成・連絡調整・広報・機関紙